【映画紹介】ドキュメント「主戦場」文筆家 真澄 蓮

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「慰安婦問題」をめぐる右派論客との論争記録

 通常、右派と左派は分断した世界を生きている。だが本作は、その厚い壁に風穴を開け、真実の探究という一本の軸を通す。櫻井よしこ氏や杉田水脈氏など代表的な右派の論客へのインタビューに続き、平和資料館の渡辺美奈氏や歴史学者の吉見義明氏が反論。歴史修正主義者たちの主張の多くは脆くも崩れ去っていく。  

右派の論客トニー・マラーノ氏が「慰安婦は鎖でつながれていなかったのだから、性奴隷ではなく売春婦だった」と言えば、国際法学者の阿部浩己氏が「外出が許され、報酬があっても、自由意志を奪われ、支配されていたのだから奴隷制だ」と反論する。いずれの意見が正しいかは一目瞭然だ。  

痛快な攻防が総勢27人の錚々たる面々によって繰り広げられる本作は、まさにバトルグラウンド!  

監督の身の安全さえ危ぶまれる超問題作の公開には、大変な苦労があっただろう。ミキ・デザキ監督は在米日系アメリカ人であり、地の利を活かして禁断の領域に切り込んだ。また、ニュースや議会の記録など、邦画では著作権的に使用不可能な映像を盛り込む。テンポよく駆け抜ける2時間に目を離す隙はない。  

本作は小テーマごとに分かれており、授業やゼミなどに使いやすい構成なのだが、後半の「謝罪」というテーマでは右派の象徴的な一言があった。「国家は謝罪してはいけないんです」。被害者の心情や歴史の真実、国際協調を反故にしても右派が重視するのは、国家間のパワーゲームであることがわかる。彼らの世界観を知り、さらに一段高い視点で突破口を探るという意味でも本作の意義は大きい。  

ただ、性奴隷を良しとしない点では右派も左派も一致していたのは救いだ。取り返しのつかない悲劇を教訓として平和な未来を築くことが、今を生きる我々の最大の使命なのだから。映画「主戦場」にはその礎となる力が宿っている。

春寒 エンドウの花は縮こまっている 咲いたばかりの桜は固くなっている 元号が発表される日は 寒い朝で始まった

三十年前 天皇の代替わり   あいつより   長生きできて良かった と つぶやいた 元皇軍兵士  

令 和  だそうだ

地下から声が聞こえないか 少女たち 男たち 女たち 朝鮮の 中国の 琉球弧 日本列島 千島 アジアの 広がる海の 水底からも テレビもラジオも騒がしい 号外も配られたらしい 令に和する 寒い一日だ 二〇一九年四月一日 元号が発表された日 畑章夫(大阪市在住)

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